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イジメに遭っていた女の子に勉強を教えてあげることになった

もう何年も前のは話だけど、ボクの命よりも大切な女性2人の話を聞いてくれるかな。

その日、いつもは通ることのない近所の公園を通って帰ろうとしたら、おさげ髪にセーラー服姿の女の子が同じ制服を身に纏った女子と詰め襟の男子数名にいじめられていた。

周りが囃し立てて、最初は言葉でからかっているだけだったのが段々とエスカレートしてきて、男子が女の子からカバンを取り上げるとパスをまわすようにして楽しんでいた。

「返して・・・」

女の子が小声で言ってたけど、そんな風に声を上げれば上げるほど男子陣は面白がって、嫌がらせを続けた。

中学生ぐらいまでは、ボクもどちらかというといじめられっ子だったので、ついパスが回ったカバンをインターセプトして、

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「おい、お前ら、なにやってんだ?」

と凄んでしまった。

「誰だよ、お前」

とイキがって言い返してきたヤツがいたけれど、睨みを利かせて、

「コイツのアニキだ」

とはったりをかましてやると、奴等は明らかに怯んだ様子を見せて、顔を見合わせるとバツが悪そうにその場を離れていった。

もともといじめられていた方だから、ホントは喧嘩なんかした事はないのだけれど、甘いマスクのイケ面ではないのが少しは幸いしたようだ。

「どうも、すみません」

2人で後に残されると、女の子がボクに頭を下げてきた。

「いつも黙っているから、ああいう奴等が図に乗るんだよ」

ボクはカバンを手渡してやりながら、女の子を改めて見てみると"ああ、いじめられても仕方ないな"と思ってしまった。

だいたいいじめられやすいタイプというのは、いかにもイケてないダサい感じのやつか自信のないヤツ、何を言われても反撃しない引っ込み思案なヤツと相場が決まっている。

最近ではその傾向も変わりつつあると聞くが、昔はそんなところだった。

女の子はこれらの条件にほとんど当てはまっていた。

「お前さ、そうやって背中丸めて自信なさそうに歩いているからああいう奴らがチョッカイを出したくなるんだよ」

"ああ、余計なお世話をしているなぁ・・・"

そう思ったけど、つい言ってしまった。

「だって・・・」

「だって、何だよ」

「ホントに自信ないんですもの・・・」

「何が?」

「全部です」

「例えば?」

「運動音痴だし、勉強もできないし、見た目も悪いし・・・」

全てが中学時代のボクと同じだった。

中学のころ、大した不良でもないくせにちょっとだけ悪ぶっている奴らにボクはよく体育館裏に呼び出されて容姿をからかわれたり小突かれたり、なけなしのお小遣いを巻き上げられたりして憂鬱な毎日を送っていた。

トイレの個室に逃げ込んでも上からホースで水を掛けられたり濡れた雑巾を投げ込まれたりして、お決まりの嫌がらせが続き、毎日が本当に苦痛だった。

ところがある日、ボクはたまたま数学の試験で良い点を取って、それを先生がクラスで褒めてくれた。

すると、何故だかイジメの頻度が少し減ったのだ。

あいつ等は自分たちよりも何かが秀でている相手はターゲットにしない。

そう気づいたのだ。

奴らの運動神経は人並み以上なので、スポーツでは対抗できない。

そう思ったボクは、勉強に励んだ。

勉強なんか好きでも何でもなかったけれど、イジメから逃れるためにボクは必死になって勉強をした。

それまで、下から数えた方が早かったボクの成績は少し勉強しただけで人並みになり、半年ほど続けると上位に入っていた。

ボクはイジメの対象から外され、たまに教室で後ろからサッカーボールをぶつけられたりもしたが、毅然と"やめろよ!"と告げると奴らはドッと笑ったが、それ以上のことは何もしてこなくなった。

トイレまで追いかけて来て、水を掛けられるといったことも無くなった。

成績が上がることで、ボクは以前よりも自信が芽生え、いじめやすい相手ではなくなっていたらしい。

スポーツは相変わらずダメだったので、体育の時間は目立たないように過ごして何とか中学を卒業した。

高校に進学してからはイジメの対象にならないように最初から勉強をした。

勉強に対する興味など一向に湧かなかったが、イジメの対象になるのが嫌でただひたすら成績を上位にキープすることに徹した。

おかげで勉強嫌いのボクが、どういう訳だか大学にも進学することが出来たので人生というものは分らない。

「いじめられないようになりたい?」

そう尋ねると、最初は怪訝そうな顔をしていたけれど、女の子は直ぐに頷いた。

「何年生?」


「1年です」

「中1にしては背が高いね」

そう言うと、女の子は少し憮然として、

「高1です」

とボクの間違いを正した。

「あ、そうなんだ・・・、ごめん」

そう言いながら、"あいつら、高校生にもなってこんな子供じみたいじめをやってるのか"と口には出さなかったけれど思った。

ボクは公園のベンチに腰を下ろすと女の子は隣に座ってボクの言葉を待った。

そしてボクは自分の中学時代の話をしてやった。

「本当にそんなことで、いじめられなくなるんでしょうか」

「信じるか信じないかは君次第だよ」

「でも・・・」

「じゃあ、1教科だけ勉強を見てやるよ」

そう言うと女の子はすこしホッとした表情を見せて、

「お願いします!」

と言うと、素直に頭を下げて見せた。

その週末の日曜日にボクたちは図書館で待ち合わせをした。

別れ際に名前を訊くと、ソヨンだと言った。

その時に初めてボクは女の子が苛められる別の理由があることを知った。

その時は何人なのか聞く勇気がなかったけれど、今では韓国人だとわかっている。

携帯電話の番号を聞いて何か下心があるように思われるのが嫌で、ボクはノートの切れ端に自分の携帯の番号を書いてソヨンに渡すだけに留めた。

見た目が悪くてモテないのを認めたくなくて、硬派を装っていた。

「使うことはないかもしれないけど、一応渡しておくよ」

ボクの番号を渡されてもソヨンは自分の番号を教えてくれなかったので、無理に聞こうとしないでよかったと思った。

そんなこともあったので約束をすっぽかされるかとも思ったが、ソヨンは約束の時間に遅れることなく図書館にやってきた。

日曜日だというのに制服姿でやってきたのがソヨンらしいと思った。

前に会った時には気がつかなかったのだけれど、ソヨンは凄く色白でメガネの奥に隠れている睫毛が長かった。

貧乳で、スカートから伸びている二本の脚は爪楊枝のように細かった。

早速自習室に席を陣取って数学の教科書を開かせて練習問題をやらせてみた。

ほとんど解けない。

小声で教え始めると周りから咳払いが聞こえ始めて、居心地が悪くなったボクたちは図書館を後にした。

近くのファミレスに入ってようやく腰を落ち着けるとボクは本格的に勉強を教え始めた。

ソヨンは覚えの早い娘ではなかった。

すっぽかさずにやってきたということから、自分を変えたいと思ってきたことは分かるが、一通りの説明をして問題を解かせても解けない。

ボクの表情に落胆の色を取ってみたのだろう。

「すみませんすみません」

とソヨンはボクにしきりに謝っていた。

「直ぐにできるようにはならないだろうから、気にしないで」

そう言って慰めてみたものの、ソヨンがいじめから解放される日はかなり遠い気がした。

別れ際にソヨンが言った。

「あの・・・、来週も教えてもらっていいですか?」

「うん、いいけど、今日やったところはちゃんと復習してきてね」

そう釘を刺して伝票を持つと、ボクはレジで会計を済ませた。

「あの、私、払います」

財布を出してソヨンが言ったが、そっと覗いてみると千円札が一枚しか入っていなくて、

「いいよ」

そうひと言告げると店を出た。

次回は最初から同じファミレスで約束をして、

「じゃぁ・・・」
と言って帰ろうとしたとき、ソヨンがボクのワイシャツの袖を引っ張った。

振り返って見ると何かを書いたメモ用紙を差し出している。

受け取って二つに折りたたんだメモを開いてみると、普通の電話の番号が書いてあった。

目を上げてソヨンの顔を見ると、

「あの・・・、それ、うちの電話番号です。私、携帯電話持ってなくって・・・」

と顔を少し伏せるようにして恥ずかしそうに言った。

今どき携帯電話を持っていない女子高生なんて天然記念物だと思ったが、ボクはありがたくメモをうけとると胸のポケットにしまった。

カノジョとのデートがあるわけでもなく、時間だけはたっぷりあったボクはそれからも週末を迎えるたびにソヨンの勉強を見てやった。

ソヨンはその場では直ぐに問題は解けるようにならないのだけれど、きちんと復習をしてきて次にあった時には教えたことをきちんとマスターしていた。

試しに教えたことをその日には解かせずに次の週に解かせると必ずできるようになっていた。

学校の授業をボクだと思って聞くように言って、ファミレスで会った時には教えることに重点を置いて復習の成果だけを見るようにするとソヨンの学習スピードはどんどん上がっていった。

その間に少しずつソヨンのこともわかってきた。

ソヨンのうちは今どき流行らないくらい貧乏で、いじめの対象になっていたのにはその辺りの事情もあったらしい。

嫌な話だが、日本人でないことも間違いなく災いしていたのだと思う。

余計なお世話かとも思ったけれど、ザ行の発音がおかしいので繰り返し発音させて、ついでに直してやった。

半年も経つと、ソヨンはボクが教えなくても自分で学習できるようになっていて、数学だけではなくて他の教科も自力で勉強ができるようになっていた。

もともと頭は悪くなくて、勉強の仕方を知らなかっただけのようだ。

成績が上位で安定してきた頃、ソヨンは以前に比べて明るくなり、いじめられることもなくなったようだった。

そんなソヨンからショックな話を聞かされたのはそんなある日だった。

ソヨンのうちの事情で、ソヨン一家は韓国に帰ることになった。

もともと色白で、明るくなったソヨンは最初と比べると見違えるほど可愛らしい女の子になっていた。

カノジョのいないボクにとっては、そんなソヨンに会うのがだんだんと楽しくなってきていたところだったので、落胆の色を隠せなかった。

ボクはやはり女の子には縁がないのだとつくづく思った。

「それでいつ帰るの?」

「多分、月末には日本を離れることになりそうです」

月末まで三週間ほどしかなかった。

「そう・・・、それじゃ、これまで頑張ったご褒美にどこかへ連れて行ってあげようか?」

本当はボクが行きたかったのだけれど、試しに言ってみた。

するとソヨンは眩しいくらいの笑顔を見せて、大きく頷いた。

モテない大学生と女子高生のデートだったので、映画を見てお茶をして帰るというだけのものだったが、ボクは楽しかった。

チラチラとソヨンの横顔ばっかり見ていたので、映画の内容はよく覚えていない。

映画館を出るときにさり気なく手をとって握り締めたら、ソヨンも握り返してくれた。

手を取らないとソヨンは必ずボクの二、三歩後ろを歩くので話しにくいと言い訳をした。

「向こうに着いたら連絡くらいくれよな」

「はい」

ソヨンと最初に出会った公園でベンチに座り、そんな会話を交わした後でボクはソヨンの肩をそっと抱いた。

長い沈黙の後、ゆっくりとソヨンに顔を近づけていくとソヨンは目を閉じて動かなかった。

手を置いたソヨンの方が震えているのがわかったが、ボクはそっと唇を重ねた。

薄い唇だけどふわっとして柔らかかった。

唇を離すとソヨンは大きく息をついて、ニッコリと笑ってくれた。

ソヨンはボクのことを親には話していなかったので、ボクはこっそり空港まで見送りに行った。

荷物検査の入り口のところでボクの姿を見つけたソヨンは胸の前で小さく手を振ってくれたが、そこまでだった。

それからソヨンとは音信不通になってしまった。

それから一年余り経って大学の三年になった頃、番号非通知の電話が携帯にかかってきた。

「もしもし」

電波があまり良くなくて声が途切れ途切れだった。

「・・・ぱぁ、・・・しっぽよ」

「しっぽ?もしもし・・・、もしもし!」

通話はそれだけで途切れてしまった。

ソヨンの声だったような気がしたが、掛け直そうにも番号が表示されていない。

万事休すだった。


何の確証もなかったけれど、ボクはその時の声がソヨンだったと確信した。

ソヨンのことは忘れようと努めていたのに、声を一瞬聞いただけでソヨンに会いたいという気持ちに火が点いてしまった。

ボクは憑りつかれたようにアルバイトに励み、お金を貯めるとリュックサック一つで韓国へ渡った。

見送った時の飛行機の行き先がソウルだったことだけは覚えていたので、ソウルへ向かった。

着いてから、どこへ行けばよいのか皆目見当がつかずに華街を目指した。

明洞と呼ばれるところを端から端まで何度も歩いてソヨンの姿を当てもなく探したが、見つかるわけがなかった。

街中をただ歩き続けて数日が経ったある日、不意に背後からあの電話のフレーズが聞こえた。

「・・・ぱぁ、・・・しっぽよ」

咄嗟に振り向いてみるとボクと同じくらい歳の女性が携帯電話で話をしてた。

ボクはお姉さんが電話を終えるのを待って、思い切って話しかけてみることにした。

歩いて行こうとするところを前を遮られてお姉さんは警戒したが、何も言葉が出てこないボクの姿を見て、

「あの・・・、日本の方ですか?」

と言った。

「はい!日本の方ですか?」

そう尋ねると、

「いいえ、でも大学で勉強をしているので、日本語、少しわかります」

ボクはホッとして、"ぱぁ"と"しっぽ"のことを訊いてみた。

最初は何の事だかわからないようだったが、そのうちに、"オッパー、ポゴシッポヨ"と言いました。

と少し顔を赤らめながら教えてくれた。

「どういう意味なんですか?」

「"オッパー"は親しい目上の男性を呼ぶときに使う"お兄さん"と言う意味です」

「"しっぽよ"は?」

お姉さんは少し間をおいてから視線をボクに向けると、

「"シッポヨ"ではなくて"ポゴシッポヨ"と言いました。"会いたい"と言う意味です」

"やっぱりソヨンだ"

ボクは心の中で思った。

ボクを"お兄さん"と呼び、"会いたい"と韓国語で言ってくれそうな人はこの世でたった一人しかいない。

ボクはあの時の電話がソヨンだと確信した。

お姉さんにソヨンの年齢と名前を告げてひょっとして知らないか尋ねてみたが、ソヨンの名前は韓国では結構一般的な名前で、同姓同名の人は山のように大勢いるはずだと教えてくれた。

ボクはそれでも諦めきれなくて、それからも何日か街を徘徊したが、運命を感じさせるような偶然の再会に遭遇することはなかった。

バイトで貯めた資金も底を尽き、ボクは失意の下、日本に戻った。

年が明けて受験シーズンも終わり、春休みに入ってから下宿でゴロゴロしていると、携帯に公衆電話からの電話が掛かってきた。

「もしもし」

「オッパー」

今度はきちんと聞き取れた。

「・・・ソヨン?ソヨンなのか?」

ボクは興奮して携帯の声に全神経を集中させた。

「はい、ソヨンです」

「今、どこ?韓国から電話しているの?」

「いいえ、今日本に着いて、空港にいます」

「戻ってきたの?」

「はい、しばらく日本に居ます」

ボクの胸は高鳴り、ソヨンの居場所を聞き出すとコートを掴んで下宿を飛び出した。

空港の中は人でごった返しているだろうからビルを出たところのバス乗り場で待ち合わせをしたが、ソヨンの姿が見えない。

キョロキョロと周りを見渡して探してみても、どこにもいない。

その時、不意にボクの目の前に旅行用のカートを引いた女性が立ち止まった。

「オッパー・・・」

「えっ?」

ボクは警戒心を隠せずに、改めて目の前の女性をジロジロと眺めてしまった。
真っ白な肌とメガネは掛けていなかったけれど長い睫毛。

ソヨンだった。

「えっ、ソヨン?」

そこにはボクの知るソヨンではなくて、背と髪が伸びて質素だけれど品のいいロングコートを身に纏ったソヨンが立っていた。

「オッパー、会いたかったよぉ」

そう言うとソヨンは人目も憚らず、ボクに抱きついてきた。

クリスチャンのソヨンにしては大胆な行動だと思ったが、以前よりは少し膨らんだおっぱいがボクの胸に押し付けられて困った。

何だか外国の映画でも見ているような気分だった。

「泊まるところはあるの?」

驚きも覚めやらぬままソヨンに訊くと、ソヨンは都心にあるビジネスホテルの名前を口にした。

とりあえず空港からのリムジンバスに乗り込んで、宿泊先のホテルへと向かった。

バスに乗っている間、ソヨンと隣り合わせに座りながらそれまでの二年余りの話を聞いた。

韓国に帰ってからも貧乏に変わりはなかったが、編入させてもらった高校には何とか行かせてもらっていて、成績だけは良かったのでいじめられることもなかったという。

ボクに連絡したいと思っていてくれていたが、ソヨンの引っ込み思案なところが出てしまって時間が経つうちに連絡できなくなってしまったという。

自分のことなどもう忘れられていると思いながらも、一度だけ友達の携帯でボクのところへ電話してみたが、電波が悪くて直ぐに切れてしまった。

通話は直ぐに途切れたものの、ボクの声は届いていて、その声を聞いてからソヨンは日本に再び渡る方法を模索していたらしい。

結局お金のないソヨンにできることと言えば、奨学金を貰って留学することしか思いつかず、ただひたすら勉学に励んでいたらしい。

そうしてソヨンは見事に某財団主催の日本留学試験に合格し、その日、念願が叶って日本に再び降り立ったのだった。

「オッパーも一緒に来て」

チェックインを済ませたソヨンがそういうので、ボクはソヨンのカートを引いてホテルの部屋に入った。

鍵を開けるときのソヨンの手は何故だか震えていた。

そうして、入ってドアを閉めるなり、ソヨンは振り返るとボクの首に抱きついてきた。

感無量でボクもソヨンの細い身体をきつく抱きしめた。

「オッパー・・・」

ボクたちの視線が重なり、唇を重ねた。

それからボクたちは抱き合ったままベッドに倒れこむと、いつまでも服の上からお互いの身体を弄り合っていた。

漸く一息ついてベッドで隣り合わせに肩を寄せながら話をした。

「オッパー、カノジョいないよね?」

「いきなり失敬なやつだなぁ」

そう言うと、ソヨンは心配そうな目をしてボクの顔を覗き込んだ。

真っ直ぐな瞳にやられてしまって、ボクは直ぐに、

「いないけどさぁ・・・」

と言うと、ソヨンはホッとした目をしてボクに身体を預けてきた。

小さな胸の膨らみに恐る恐る手を当ててみたけど、ソヨンが嫌がることはなかった。

「服、脱いじゃっていい?」

そう尋ねると、ソヨンは一瞬躊躇ったけれど、小さく頷いてベッドの脇に立った。

ボクに背中を向けてブラウスとスカートを脱いで下着姿になると、再びボクの横に潜り込んできた。

真っ白なブラジャーとショーツだけになったソヨンの身体はビックリするほど綺麗で、女性との縁の薄いボクは興奮した。

ソヨンの首の下に腕を差し入れてゆっくりと唇を重ねようとすると、ソヨンの口から熱い吐息が漏れてボクの唇にかかった。

どちらからともなく舌を絡め合うようになって、ソヨンの背中に腕を回してブラジャーのホックを外すとソヨンは慌てて腕で自分の胸を隠した。

ボクはその腕をゆっくりと広げさせると、すべすべのお肌の胸に顔を埋めた。

無我夢中で小さいけども、ピンと勃った乳首を口に含んで赤ん坊のようにチュウチュウと吸った。

お尻の方に手を伸ばしてショーツを脱がせようとすると腰を少し浮かせて脱がせるのにも協力してくれて、ボクたちは生まれたままの姿で抱き合った。

ソヨンに覆いかぶさった状態から少しずつ身体を下半身のほうにずらしていって、ソヨンの股間に顔を埋めようとしたら、突然ソヨンがボクの肩を押して動きを制した。

「オッパー、やめて・・・」

「どうして?」

「私、シャワー浴びていないから、汚い・・・」

ボクはソヨンに微笑むと、

「ボクにとって、ソヨンの汚いところなんかないよ」

そう言って、少し強引にソヨンの股間に顔を埋めた。

敏感な突起を舐め続けると、やがてソヨンはやがて息が荒くなり、小さく喘ぎはじめた。


「あ、あ、あ、あ、オッパー・・・、あぁん、オッパー・・・」

ボクはその声を聞いているだけで股間のものがギンギンに屹立してしまったが、もっとその声を聞きたくて、いつまでも突起に舌を這わせ続けた。

すると、ソヨンの声がだんだん大きくなって、

「オッパー、オッパー、あ、オッパー!」

叫ぶようにボクを呼ぶとソヨンは身体を震わせ、腰を引いてベッドの上で身体を丸めた。

喉の奥から震える吐息を吐き出すようにして丸まっているソヨンにシーツを掛けてやって、ボクはその上からソヨンの身体を抱きしめた。

「オッパー・・・」

「ん?」

「何だか、すごかった」

「気持ちよかった?」

「・・・ばか・・・」

ソヨンは軽くぶつフリをして、ボクの胸に顔を埋めた。

抱き合って暫くそのままにしていると、ソヨンが言った。

「ねぇ、オッパーは気持ちよくなってないでしょ?」

「ボクはいいよ」

「どうして?」

「ソヨンに会えただけで嬉しいから」

本当のことを言うと、ソヨンがあまりにも綺麗になってしまっていて、ボクは少し怖気づいていたのだった。

すると、ソヨンは身体を起こしてボクに覆いかぶさってきたかと思うと、キスしてきた。

ボクの股間は直ぐに復活してアツく熱を帯び、肉棒がソヨンのお腹に当たった。

「オッパー、おっきくなってるよ」

そう言うとソヨンはベッドに仰向けになって、

「オッパー、私、オッパーとひとつになりたい・・・」

そう言うと恥ずかしそうに顔をボクの方から背けた。

ボクはソヨンの長い脚を割って覆いかぶさると、屹立したものをソヨンの亀裂に押し当てた。

「本当にいいの?」

そう尋ねると、ソヨンはボクのほうに腕を突き出して、

「来て」

と言ってくれた。

風俗にしか言ったことがなくて、処女はおろか普通の女性と交わるのも初めてだったので、余裕のないボクはゴムもつけずに一気に侵入してしまった。

ソヨンは歯を食いしばりながら下からボクの首に抱きついてきて、痛みに耐えていた。

ソヨンの目尻から涙が伝ったのを見た瞬間、ボクは我に返った。

「ソヨン、もうやめようか?」

そう言ったけれど、ソヨンは目を瞑ったまま首を横に振って続けるように促した。

本当のことを言うと、ソヨンの中は暖かくて、柔らかくて、"やめて"といわれても止められる自信はなかった。

ボクはソヨンにの様子に注意しながらもゆっくり動いていたのだけれど、結局は欲望に負けて、激しく腰を打ち付けると、あっという間に脈打って果ててしまった。

「ソヨン・・・、中で出しちゃった」

ソヨンに入ったまま、そう言ったがソヨンはボクの首に強くしがみついたまま、ボクの耳元で言った。

「オッパーが気持ちよかったのなら、私、どうなってもいいよ」

これにはやられた。

ボクがソヨンの股間をティッシュで拭ってやると、鮮血がボクの出したものに混じってティッシュを朱く染めた。

ボクは自分の後始末を済ませるとソヨンの身体をシーツで包んで強く抱きしめた。

"ソヨンが妊娠したらどうしよう・・・"

無責任にもそんな後悔をしていると、何日か経った朝、ソヨンからメールで、

『生理あったよ』

と連絡が届いた。

毎日のように電話で話したり会ったりしていたのに、メールで知らせてきたのは恥ずかしかったのだろうが、きっとソヨンも気にしていたのだと思う。

ソヨンに心配させたくなくて、それからはきちんとゴムを用意するようにした。

ソヨンが通うことになった大学は、ボクのところよりも遥かに偏差値が高くて、最初に大学名を聞いた時には度肝を抜かれた。
並大抵の努力では合格できないし、ましてや留学試験に合格するとなると想像を絶する努力を要したに違いない。

そのことをソヨンに告げると、

「でも、オッパーが勉強の仕方を教えてくれたから」

と言われて、ボクは何だか複雑な気持ちになった。

"あっという間に、抜かれちゃったなぁ"

そう思った。

ソヨンの学校に通うにはもっと便利なところもあるはずなのに、ソヨンは大学とボクの下宿の中間ぐらいのところの安いアパートを借りた。

そして週末が来るたびに、ボクの下宿にやってきては甘い週末を一緒に過ごした。

土曜日は朝の連ドラが始まる前にボクのところへやってくるので、

「金曜日の授業が終わったら来れば?」

そう言うと、ソヨンは翌週から二日分の着替えを持ってボクのところへ通ってくるようになった。

金曜日の夜は一緒にDVDを借りに行って、ご飯を食べてから、一緒にお風呂で洗いっこをするのが、お決まりのパターンだった。

ソヨンが石鹸を泡立てて優しく丁寧にボクのジュニアを洗ってくれて、お湯で洗い流してくれたあと、ソヨンを見つめているとちょっと恥ずかしそうにコクリと頷くとボクのものをパクリと咥えてくれた。

「あぁ・・・」

思わずボクは声を上げてしまった。

「オッパー、気持ちいい?」

上目遣いにそう聞かれて忘我の表情で応えると、ソヨンは一層激しくフェラを続けた。

「あ、ソヨン、ダメだよ」

そう言ったときにはもう遅かった。

ボクのジュニアはソヨンの口の中で脈打つと物凄い射精感がボクを襲った。

ボクをお口に含んだままソヨンの喉がゴクリと動いて、そのままチュウチュウと吸われてお掃除までしてもらった。

ボクはソヨンを掻き抱くように抱きしめて

「好きだ、好きだ」

と何度も言うと、ソヨンはそっとボクに腕を回すといつまでもボクの背中をさすっていた。

その頃になると、ベッドに移ってからのソヨンは一層妖艶さが増していた。

覆い被さって、シックスナインでソヨンの股間に顔を埋めていると、下から舌を伸ばしてきてボクの屹立したものをチロチロと刺激した。

そのまま続けられるとまたしても果ててしまいそうだったので、ボクは身体の向きを入れ替えて添い寝をするようにソヨンの身体を抱くと優しく亀裂に指を這わせた。

十分に膨らんだクリを撫でながらピンと勃った乳首を口に含んでいると、

「あー、オッパー・・・、ダメ・・・、イッ・・・、イッちゃう・・・、あ、あ、あ、あ、あー、イク、イク、イク!」

清楚なソヨンの言葉とは思えないような声を発しながら、ソヨンは絶頂に達した。

身体の震えが収まらないままに、濡れそぼった蜜壺に指を押し入れて、すっかりボクの指に馴染んだざらついた所を刺激しながら舌を絡めると、白い喉を仰け反らせて、

「あー、オッパー、またイッちゃう・・・、あ、あ、またイッちゃう!あー、おかしくなっちゃう・・・、ダメーっ!!!」

ビクビクと全身を震わせながら胸をそらしてオルガに達すると、吃驚するくらいの愛液でシーツを濡らし、ソヨンはそのまま気を失って動かなくなった。

「オッパー、ずるいよ」

目を覚ましたソヨンは悪戯っぽい目を見せてそう言うと、ボクの股間に顔を埋めてしっかりと勃たせ、ボクの腰の辺りに跨るとスッポリとボクを根元まで呑み込んだ。

ボクも負けじと上体を起こし、ソヨンの小さいけどしっかりと膨らみを宿した胸に吸い付いて、抱きしめるとソヨンは髪を振り乱して腰を前後に動かした。

ソヨンに次の絶頂が訪れると同時に、ボクはソヨンの肉襞に包まれて、思いっきり果てた。

ソヨンと街を歩いていると、ボクとの組み合わせに違和感を抱く人も多くて、"どうしてこんなヤツが・・・"と思われているのか、露骨にボクたちを振り返る人も少なくない。

それを僥倖と思わなければならないのに、大学の仲間の高木と下宿で飲んでいた時に、ソヨンのことを褒められて、照れ隠しもあってつい調子に乗ってしまった。

「どうしてソヨンがお前とくっついているのか、世界の七不思議だよ」

そう言われたのが嬉しくて、思わず、

「でもさぁ、あいつ韓国人だからさぁ・・・」

そう言った時、高木の視線がボクの背後に移り、気まずそうに目を伏せた。

空気が異様な雰囲気に変わって振り向いてみると、ソヨンが玄関口に立っていた。

「オッパー・・・」

ボクは一気に酔いが醒めた。

ソヨンの大きな目に見る見る涙が貯まり、直ぐに頬を伝って流れた。

ソヨンは持っていたカバンをどさりと玄関口に置くと家から出て行った。

茫然としていると、高木がボクを突いて追いかけるように促した。

ボクは慌ててツッカケだけを履いて、ソヨンを追いかけた。

走るソヨンに漸く追いついて、気がつくとそこはソヨンと最初に出会った公園だった。


「ソヨン、ごめん・・・」

ソヨンの腕を掴んでそういうと、ソヨンは振り返って、

「オッパー・・・、オッパーはずっと私のこと、そういう風に見ていたの?」

と涙でぐしゃぐしゃになったままの顔で言った。

「違うんだ!そんなんじゃないんだ!つい・・・」

「つい、なに?」

「ソヨンのこと高木に褒められて、照れ隠しで心にもないことを言ってしまったんだよ」

「・・・でも、心で思ってなかったら、口をついて出ることもないんじゃないの?」

ソヨンの言っていることはある意味、正しかった。

その頃のボクは、ソヨンのいない世界なんて考えられなくて、1人でいじいじと思い悩んでいた。

お互いにまだ学生で、何よりも国際結婚となるとすんなりいくはずがないと妄想を膨らませては、1人でほくそ笑んだり気持ちが沈んだりしていた。

もう正直にそのことを話すしかなかった。

「ソヨンが韓国人だってこと、気にしていないって言ったら嘘になる・・・」

ソヨンは大きく目を見開いて、信じられないという風にただ首を小さく横に振っていた。

「最後まで聞いて。ソヨン、ボクたちがこの先ずっと一緒にいようと思ったら、ソヨンが韓国人でボクが日本人であることは、考えずにいられないんだ」

「オッパー・・・、何言ってるのかわからない・・・」

「だから、ボクたちの結婚は、きっとすんなりいかないだろうって・・・」

その時、急に呆気に取られたようにソヨンの動きが止まった。

「え?結婚?オッパー・・・、私との結婚を考えてくれているの?」

「当たり前だろう」

「私、韓国人だよ」

「ばか、そんなことわかってるって」

「お父さんもお母さんもきっと反対するよ」

「だから、どうすればいいのか、ずっと悩んでたんだ」

「ホント?」

「ソヨンもご両親にボクのこと、話してないだろう?」

そう言うとソヨンは少し顔を伏せて、力なく頷いた。

「ソヨンのご両親にもきっと反対される・・・」

ボクは真剣に悩んで、やっとの思いで悩みを打ち明けたのに、気がつくとソヨンはいつの間にかハニカミながらニタニタしていた。

「ソヨン、聞いてくれてる?」

「うん、そうね。それは由々しき問題よね、うふっ」

「おいおい、今泣いたカラスがもう笑ってるじゃないか」

「カラス?私、カラス?」

そう言うとソヨンはゲラゲラと腹を抱えて笑い始めた。

「こいつぅ」

指でおでこを突くように軽く押してやると、ソヨンは"エヘヘ"と笑ってボクの首に抱き付いてきた。

「オッパーのお嫁さんになりたいよぉ」

ボクはソヨンの細い腰に腕を回すと、ギュッと抱きしめながら少し持ち上げた。

「何があっても、オッパーについていく」

ボクの耳元で囁くソヨンの声が聞こえた。

ボクたちは何があろうと一緒になろうと誓い合った。

無事に卒業できることが決まった時、ボクはソヨンを連れて田舎に帰った。

就活に使っていた一張羅のスーツを着て、ソヨンには正装のチマチョゴリを着て貰って2人でボクの両親に会いに行った。

勘当と言われようとも、駆け落ちすることになっても、不退転の気持ちで生まれ育った街の駅に降り立った。

そんなボクの気持ちを知ってか知らずか、ソヨンは帰省をボクとの旅行とでも思ってるかのように、列車の中ではしゃいでいた。

「ソヨン、緊張しすぎてハイになっているんじゃないの?」

そんな風に言ってみると、ソヨンはいつもと同じ優しい目をして言った。

「うん、そうかもしれない」

「うちの親は田舎者だから、嫌な思いをさせるかもしれないよ」
「平気。だって親子の縁を切ると言われても一緒になるって言ってくれるんでしょう?」

「そうだけどさ・・・」

「私にはそれで十分。それだけで一生、オッパーについて行ける・・・」

そう言うとソヨンは人目も憚らず、ボクに抱き付いてきた。

家の玄関先に着いたときには、流石に緊張した。

大切な人を紹介するとあらかじめ伝えてあったので、ソヨンの姿を見ればいくら田舎者でも一目で状況を理解するはずだ。

引き戸を開けて、中に声を掛けた。

「ただいま」

パタパタとスリッパの音を立てながら、お袋が出迎えてくれた。

「お帰り」

ボクの後ろに控えているソヨンの姿が目に入っているはずなのに、お袋は至極普通に振舞っている。

「初めまして。ソヨンです」

ソヨンが挨拶すると、

「まぁまぁ、韓国のお嬢さん?この子の母親です。さぁさぁ、上がって上がって」

と言って早く家に入るように促した。

ボクは何だか拍子抜けしたのだけれど、ソヨンを連れて居間に向かうと父親の他に帰省していた姉がいた。

「あ、姉貴も帰ってたの?」

「うん、昨日ね」

ソヨンがボクの後について居間に入ってくると父親と姉にも挨拶をした。

「お邪魔します。ソヨンです」

驚いたことに父親も満面の笑みで、ソヨンを歓迎してくれた。

ボクとソヨンはキツネにつままれたように顔を見合わせて複雑な笑みを交わした。

食事が始まると漸く事態が呑み込めてきた。

前日に帰省した姉も結婚したい相手がいるのだと報告をしに帰ってきていたのだった。

「へぇ、どんな人?写真はないの?」

そう言うと姉は照れ臭そうに"へへっ"と嬉しそうに笑うとボクとソヨンに一葉の写真を差し出した。

「ボブって言うの」

写真の中でカメラ目線をしながら姉の頬に唇を押し付けている黒人さんの姿がそこには写っていた。

どうやら両親と姉の間で前日にひと悶着あったらしい。

"姉貴、地ならしをしておいてくれて、ありがとう"

ボクは心の中で姉に手を合わせた。

親父とお袋にしてみれば、ボブのインパクトに比べたらソヨンは外国人のうちに入らなかったに違いない。

それから程なくして、ソヨンもご両親にボクの話をしてくれた。

高校生の頃の話もしてくれて、ご両親は最初は少し驚いたようだったが、直ぐに許してくれたという。

ご両親とも日本にいた頃に、周りの人には親切にしてもらっていたらしい。

ボクとソヨンだけが猛烈な反対を受けるだろうと思い込んで勝手に盛り上がっていただけで、シャンシャンで一気に話が決まってしまった。

「お父さんはね、勘当されてもお母さんをお嫁に貰うって言ってくれたんだよぉ」

妻のソヨンがボクたちの娘にノロケている。

「私もお父さんのお嫁さんになるぅ」

「だーめ、お父さんはお母さんのオッパーなんだから、あなたはあなたのオッパーを見つけなさい」

"幼稚園児を相手に何をマジに諭しているんだ"

そう思いながらもボクは命よりも大事な2人の姿を見つめながら今の幸せを噛み締めている。

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